実地医家のための 熱中症・脱水の予防、診断、対処法
子供達、高齢者のいのちを守る水分補給、飲水学
■講師 谷口英喜 先生(済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/栄養部 部長)
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【セミナー概要】
毎年、この時期になると熱中症患者が増加してきます。熱中症の発生機序は暑熱環境から来る脱水症と異常高体温です。特に、脱水症は熱中症に限らず、高齢者や小児において臨床現場で常に問題であります。その脱水症に関する考え方が近年大きく変化してきています。例えば、脱水症の診断に、尿の色、尿比重、BUN/Cr、口渇感などが無効なこと。また、各種ガイドラインで脱水症の治療の第一選択が経口補水療法になったことにより、医師も正しい経口補水療法が求められるようになりました。
本セミナーでは、熱中症・脱水に関して、役立つ科学的根拠を解説していきます。さらには、日常的な水分補給の指導も患者は興味を持っています。一度聞けば理解できる、いのちを守る水分補給、飲水学も、学んでみませんか!皆様、奮ってご参加ください。
午後の部(15:00~17:00)
1)脱水症 の基礎知識 、アセスメント(フィジカルアセスメント)を解説します。
2)熱中症の 予防策、対処 法をガイドラインに沿って解説します。
3)年代に応じた日常的な (いのちを守る)水分補給について解説します。
4)経口補水療法の基礎(スポーツドリンクとの違いも含め)を解説します。
5)脱水症の治療法について解説します。多くの病院で実施されている術前経口補水療法についても紹介します。
セミナー要綱
セミナーNO. | 760 |
開催日 | 2023年7月30日 15:00〜17:00 |
講師 | ■谷口英喜 先生(済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/栄養部 部長) |
診療科目 | 総合診療 |
DVD価格 | 3,300円(会員価格/税込) |
終了したセミナーの報告と開催の模様
■7月30日(日)夕刻に開催しました第760回医療技術セミナー『実地医家のための 熱中症・脱水の予防、診断、対処法-子供たち、高齢者のいのちを守水分補給、飲水学』は盛会裡に終了しました。
講師には、済生会横浜市東部病院患者支援センター センター長/栄養部 部長であります谷口英喜先生をお招きしました。谷口先生は、暑い日が続く時期になるとテレビやラジオで引っ張りだこの先生です。この領域では、きちんとした書物を残しておられる唯一と言って良い研究者ですが、主宰子は前々からお出でいただきたいと考えておりましたところ、約3週間前にFacebook上(恐らく共通の友人が存在しているのだろうと想像しますが)での遣り取りを目にして、たまらず「セミナーでお話し願えませんか?」と書き込んでみたところ、すぐにご連絡をいただきまして、速攻で今回の企画が実現したという訳です。大変うれしく思うとともに感激しております。若干、失礼な出会いでありましたが。
今回の講義の組立ては以下の通りでした。
1.脱水症の基礎知識と水分補給
高齢者の2割はかくれ脱水 子どもが脱水症になりやすい3つの理由
高齢者が脱水症になりやすい3つの理由-それは加齢が原因 脱水症の診断法・アセスメント
脱水症のサインの数々 脱水とはカラダから水と電解質(円分など)を失うこと 脱水症は痛みを増強させる
規則正しい食生活と水分補給を
2.熱中症の基礎知識と対応
脱水症と熱中症を混同しない 熱中症を起こす機序 熱中症のウソ・ホント 脱水症は熱中症のリスクを高める
脱水症になったら経口補水液を摂取 熱中症の後遺症 熱中症の予防・治療 脱水症と熱中症の論文
経口補水療法の論文 Preoperative OPT:POORT(術前経口補水療法)
3.How to ORT(Oral Rehydration Therapy;経口補水療法の全て)
経口補水療法とは? 主成分は? なぜ塩が必要? 海外での経口補水療法
スポーツドリンクと経口補水液との違いは? 経口補水療法のメカニズムは? 吐いていても飲める?
下痢していても飲める? 特別用途食品・病者用食品? 経口補水エキオーエスワン
ORSの摂取量は? ORS飲みにくい時は? やってはいけないこと ゼリー、パウダーの使い分けは?
予防的にORSを摂る効果は?
質疑:Q:スポールドリンクと経口補水液の違いは?(再質問)、A:塩分では無く糖分が高いので摂取過多に注意!
質疑:Q:熱中症の基本病態は何か?熱中症とは「暑熱環境における身体適応障害によって発生した状態の総称」とされていますが、暑熱で体温調節機能そのものが障害されるから深部高体温になり色々な臓器症状が起きるのでしょうか?それとも単に体温調節機能を超えて体が熱せられることが原因なのでしょうか?A:熱中症の病態は先生のご指摘通り深部体温上昇による臓器障害です。従って、表面体温は診断基準には入ってきません。また深部体温は簡単に計測できないので重症度分類は症状から行われます。深部体温が簡単に計測できれば、それが一番良い指標になると思います。私は麻酔科医ですのでそのあたりの研究に携わったこともありますが、なかなか血液温以外は難しい所です。全身麻酔をかけると体温調節機構が破綻して、恒温動物から変温動物に人間は移行します。全身麻酔がとけると、急に恒温動物になるので、シバリングがおきます。熱中症も同様で、脱水症が限界を超えて体温コントロールが破綻します。そして、変温動物になり、外気温に左右され、臓器障害が起こってきます。従って、治療も、外気を冷やし、カラダを冷やし、脱水症を改善させるという考えに至ります。熱中症には遺伝子が存在するという研究もあります。おそらく体温調節機能が早々に破綻しやすい遺伝子だと考えられます。まだまだ、熱中症は解明されていない部分も多くあります。
返礼:やはり熱中症では体温調節機能異常が基本病態になっている、ということですね。全身麻酔で恒温動物から変温動物に変化するのは初めて知り、驚きました。多分麻酔科の講義では習っていたのでしょう。日常臨床では病的状態ばかり相手にしているので、生理機能について教えて頂くと非常に新鮮な感じです。ありがとうございました。
■講師 谷口英喜 先生(済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/栄養部 部長)
<略歴>
1991年 福島県立医科大学医学部卒業、横浜市大麻酔科入局
2011年 神奈川県立保健福祉大学保健福祉学部栄養学科 教授
2016年 より現職
東京医療保健大学大学院客員教授
神奈川県立保健福祉大学大学院看護領域臨床教授
慶應義塾大学麻酔科学教室非常勤講師
<マスコミ>
脱水症・熱中症・周術期管理の専門家として、テレビ・ラジオなどを中心に多数出演
<著書>
「いのちを守る水分補給 」 評言社 、
「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本(同)、
経口補水療法ハンドブック(同)、 他 多数
<資格>
日本麻酔学会専門医
日本集中治療医学会専門医
日本救急医学会専門医
日本静脈経腸栄養学会指導医
日本外科代謝栄養学会教育指導医