頻繁に遭遇するのに軽視されがちな胸壁症候群
胸壁症候群/外来症例検討
■講師 上田剛士 先生(洛和会丸太町病院 救急・総合内科 部長)
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【セミナー概要】
日常診療で頻繁に遭遇することが多いのに、なぜか軽視されがちな胸壁症候群と、演者の外来を受診した奇病でもなければ珍病でもない、しかし軽視されがちな症例をいくつか紹介します。もちろん治療介入が可能で、正確な診断をする価値が高い病態ばかりです。「もしかしたら今まで見過ごしていたかもしれない」と思うような症例をご用意いたします。皆さま、奮ってご参加ください。
午前 10:00〜12:00
①こんなに多いのに意外に知らない胸壁症候群
②一卵性双生児から学ぶgeneral appearance
①プライマリケア領域において胸壁症候群は胸痛の原因の1/3〜1/2を占めますが、重篤な疾患ではないために軽視されがちです。しかし胸壁症候群という明確な診断名をつけることは、患者さんを安心させ、痛みの治療や予防を行うことに役立ちます。さらに言うならば、我々が「内臓症候群」と最終診断する事は無いように、「胸壁症候群」という最終診断は不適切です。胸壁症候群を来す各疾患について我々は精通する必要があるのです。
本セミナーでは胸壁症候群の各論にまで踏み込みながらも90分でそのエッセンスを学びます。
②文字だけでは伝わりにくい顔貌や全身概観から読み取れる情報を、一卵性双生児の写真を通じて学びます。百聞は一見に如かず、一目瞭然セミナーです。
午後 12:30〜14:30
総合内科の外来症例検討会
演者の外来を受診した奇病でもなければ珍病でもない、しかし軽視されがちな症例をいくつか紹介します。もちろん治療介入が可能で、
正確な診断をする価値が高い病態ばかりです。「もしかしたら今まで見過ごしていたかもしれない」と思うような症例をご用意いたしますので、正解にたどり着けるかどうか、是非チャレンジしてみてください。
セミナー要綱
セミナーNO. | 741 |
開催日 | 2023年9月3日 00:00〜00:00 |
講師 | ■上田剛士 先生(洛和会丸太町病院 救急・総合内科 部長) |
診療科目 | 総合診療系 |
DVD価格 | 5,500円(会員価格/税込) |
終了したセミナーの報告と開催の模様
■9月3日(日)に開催しました第741回医療技術セミナー『こんなに多いのに意外に知られていない胸腹壁症候群』は盛会裡に終了しました。
講師には、洛和会丸太町病院救急・総合内科部長上田剛士先生をお迎えしました。 上田先生は冒頭「自分は総合診療医として、診療のハザマ=盲点を突いた診療と講演による普及を志している」と発言されましたが、確かに、着想力豊かで大胆な挑戦と斬り込みを信条とされるセミナーをこの間お願いし続けて参りました。整理しますと『“めまい”を極める-内科医から診た“めまい”の診断学』(#221;2013年9月)、『“浮腫”を極める-内科医から診た“浮腫”の診断学』(#237;2014年1月)、『高齢者診療と心因性疾患患者の診療で身体観察を強力な武器にするためのエビデンス』(#323;2015年7月)、『看護師のための 患者さんの“身体観察”』(#445;2017年9月)、そして『高齢者の身体診察』(#712;2023年1月)と続き、6回目でしたでしょうか?他に、洛和会の医師で印象深いのが『呼吸器の診断と治療に直結する身体所見-肺聴診を中心に』(#568;洛和会音羽病院呼吸器センター長坂行雄先生)、『不明熱を洗いなおす』(#083;2011年1月;岩田健太郎先生とともに当時結婚されたばかり?の土井朝子先生が出演)などもあります。
さて、今回のセミナーの講義の組立ては以下の通りでした。
午前の部
1. こんなに多いのに意外に知らない胸腹壁症候群
① 総論:胸痛の訴えと原因背景-「胸痛」では、心筋梗塞等を心配して来院されるので安心させることが一番重要で、きちんと説明する
胸腹壁症候群25%~49% 、冠動脈9.7~14.8%、呼吸器科10..3~18.2%、
食道疾患 6~7.1%、心因性疾患9.5~18.2% 胸鎖関節の痛み SAPHO症候群、
② 胸骨・剣状突起の痛み-骨髄病変、圧痛、③肋骨・肋軟骨-肋軟骨炎、Tietze症候群、肋骨折、
④ 肋間神経痛-帯状疱疹、椎体炎、季肋部痛、⑤頸椎病変による胸痛-cervical angina、
⑥筋痛による胸痛-小児Precordial catch syndrome、流行性筋痛症
⑦ 、⑧腹壁の神経痛1,2、 骨粗鬆症 脊椎骨折、胸椎椎間板ヘルニア
⑨ 腹部に何かを触知する、⑩胸腹壁疾患はコモンだ
2.視点を変えれば見える?(症例検討)
55歳・男性 左頚椎症性神経根症
左上肢筋力低下・感覚障害・左眼烈の狭小化瞳孔縮瞳傾向 パンコースト症候群・腫瘍
午後の部
3.一卵性双生児から学ぶ概観診断クイズ 一卵性双生児は人口の0.2%
喫煙による“皮膚老化現象”、肥満度は見た目の年齢に影響を与える 日光暴露やホルモン補充療法
Cushing症候群、Addison病、先端巨大症、男性の性腺機能低下、甲状腺機能低下症、
ダウン症候群、クラインフェルター症候群/ターナー症候群
4.悪夢が一番問題-眠剤と精神症状について(症例検討)
40歳台・女性 不眠・悪夢を見る 悪夢の誘因は? 向精神薬の副作用としての悪夢
①眠剤と精神症状について ②悪夢を引き起こす薬剤には何があるか? 悪夢の治療にはなにがあるか? 番外:α1Bが問題-悪夢と関連する神経伝達物質は
講義をお聞きしていて初めて知ったことですが、肋骨は12対の肋骨が存在するんですが、7番目までが「真肋」、8-10番までが「仮肋」、11,12を「浮肋」と呼ぶ、のだそうです。確かに模型による解剖解説図でも8-10までの「仮肋」は太い胸骨から延びた骨の延長に見えて圧力には弱そうに見えるし、11,12に至っては脊椎骨から延びて弱そうな骨に見えます。(テキスト⑰頁の下段の図)人体って奥が深いんですね。
質疑では以下の質疑が行われましたが、ここでは質問のみを記し、回答を希望される方はDVDないし動画をお買い求めいただきご確認下さい。
「1」 への質問:Q1.症例について、椎体炎の症例がありましたが、入院されるにあたり、血液検査で引っかかる点はなかったのですか?Q2.帯状疱疹ヘルペスの85歳・男性ですが、前額部が腫れ。しびれが出ていたのですが、最初から抗ウイルス剤を出して治療を始めて宜しいものですか?Q3.帯状疱疹ヘルペスによるデルマヒで、耳も痛い・・・というので、ステロイド治療を始めたのですが、バルトエックス剤2錠で良かったでしょうか?Q4.大工さんの剣状突起の痛みということでしたが、どういう状況でそうなったのかお教え下さい?Q5.テキスト34頁のEpidemic pleurodyniaの痛みの状況はどうだったんでしょうか?Q6.帯状疱疹ワクチン治療に使うワクチンですが?シングリックスと水痘ワクチンのどちらをお使いになっておりますか?シングリックスは高いと思っているのですが?
■講師 上田剛士 先生(洛和会丸太町病院 救急・総合内科 部長)
【専門】 内科、総合内科、救急、膠原病
<略歴>
02年 名古屋大学医学部卒業
名古屋掖済会病院
04年 名古屋掖済会病院救急専属医
05年 京都医療センター総合内科レジデント
06年 洛和会音羽病院総合診療科
12年 洛和会丸太町病院救急総合診療科 医長
18 年 同 部長
広島大学病院 総合内科・総合診療科 客員准教授
西日本臨床医学研修機構 理事
<著書>
『高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス』(シーニュ2013年、2020年)
『Dr.上田の もうダマされない身体診察』(メディカ出版 2019年)
『内科医に役立つ! 誰も教えてくれなかった尿検査のアドバンス活用術』(医学書院 2019年)
『ジェネラリストのための内科診断リファレンス;エビデンスに基づく究極の診断学をめざし
て』(医学書院 2013年)
その他 多数