実地医家のための 慢性腎臓病(CKD)と高血圧の診断と治療 2
■講師 安藤重輝 先生(東北医科薬科大学若林病院腎臓内科准教授)
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【セミナー概要】
CKD(慢性腎臓病;Chronic Kidney Disease)はまさに common disease の代表疾患であり、内科医であれば必ず遭遇する疾患です。高齢化社会を迎え、その傾向はさらに顕著になるでしょう。昨年11月の1回目のセミナー(#688)では早期からの予防を見据えた医療介入が肝要であることを強調させていただきましたが、同時に確実な診断を行うことも将来的な透析予防には必須です。もっと具体的にいえば糖尿病性腎症、腎硬化症といった生活習慣病に起因する疾患と腎炎症候群との鑑別です。前者との思い込みで腎炎を見逃して、末期腎不全に陥ったと予測できる症例も数多く存在します。腎疾患の診断には時間軸でデータを読み解くという冷静沈着な姿勢が必要です。今回はそのあたりにも触れたいと思います。
腎保護のために有益な新薬が次々に上市されております。ツールの増加によりCKD管理はよい意味でのパラダイムシフトを迎えております。昨年に紹介させていただいたHIF-PH阻害薬、ARNIに加え、本年度はSGLT2阻害薬、MRA等についても触れさせていただきます。
内科医であれば絶対に診療を迫られるCKD、単純でありながら奥深い疾患です。CKD診療のスキルアップを狙う先生方に是非とも参加いただきたいと思います。
ご聴講いただいた先生方のご尽力により透析導入患者様が一人でも減ることを祈念してやみません。
午前の部 10:00~12:00 総論
①1人でも多くの透析患者を減らすためには・・
~新しい腎臓内科への紹介基準と反省すべき症例~
②慢性 腎臓病 CKD 関連病態の基本
~HIF PH 阻害薬、 便通管理、高脂血症等
午後の部 12:30~14:30 各論
心腎連関を考慮した最新の治療
①ARNI
② SGLT 2阻害薬
③MRA、新規K吸着剤
セミナー要綱
セミナーNO. | 737 |
開催日 | 2023年7月9日 00:00〜00:00 |
講師 | ■安藤重輝 先生(東北医科薬科大学若林病院腎臓内科准教授) |
診療科目 | 腎臓、循環器科 |
DVD価格 | 5,500円(会員価格/税込) |
終了したセミナーの報告と開催の模様
■7月9日(日)に開催しました第737回医療技術セミナー『実地医家のための CKDと高血圧の診断と治療-腎臓疾患と高血圧2』は盛会裡に終了しました。
講師には、東北医科薬科大学若林病院腎臓内科 科長・准教授で、人工透析センター センター長であります安藤重輝先生をお招きしました。昨年の11月28日以来の2回目(#688)のご出演です。前回、初めてお目に掛った時、東北大学第二内科のご出身ということで、阿部圭志教授(先年お亡くなりになったとのこと)や、先代の吉永薫名誉教授、等にお世話になった話をさせていただいて、身近に感じさせていただきました。
今回の講義の組立ては以下の通りでした。(テキストの構成は以下の通りに変更されました)
午前の部
1)CKD(慢性腎臓病)と高血圧の診断・治療
2)腎性貧血治療におけるHIF-PH阻害薬への期待
午後の部
3)ARNI(アンジオテンシン受容体ネプリライシン阻害薬)で変わるCKD高血圧管理
海外第Ⅲ相臨床試験 オル目サルタン対象二重盲検比較試験
SGLT2阻害薬の心臓、腎臓への影響~腎臓内科の立場より
4)SGLT2阻害薬の心臓、腎臓への影響~腎臓内科の立場より
5)CKDとMRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)
講義では、「腎臓と心臓は一蓮托生、恐らく将来、“心不全”はパンデミックを迎える筈」という言葉は印象的でした。
最新の治療薬の開発動向などの情報など,盛りだくさんなお話しでした。特に、安藤先生は、中でもフィネレノンという薬剤が推しで、SGLT2阻害薬とも匹敵するほどの効果を発揮する、将来性のある治療薬である、とのことでした。
質問は以下のようにたくさん出ました(そのまま紹介した方が内容が分かりやすいかと記録通りに紹介します):
Q1.テキストp17にあります34歳女性の症例をみますと、普通の健診で尿潜血は頻繁に遭遇しますが、その場合、尿沈渣で糸球体型なら腎生検などですが、非糸球体型がどれぐらいの期間続けばフォロー不要でしょうか? また糸球体型赤血球は、一般の検査会社でしたら、普通の尿沈渣,オーダーでちゃんと診ていただけるモノでしょうか?Q2.エベレンゾは腎機能の悪い症例、炎症のある症例でも効きやすい。この炎症とは具体的にどのような炎症のことですか(動脈硬化に起因した高感度CRPが上昇したような状態ですか、あるいは肺炎や蜂窩織炎があるような状態のことで
すか?常況)?Q3.腎性貧血をHIF、PH阻害剤で治療したらeGFRか改善することはありますか?Q4.HIF-PH阻害剤で治療開始後鉄欠乏の出現の有無、貧血の過剰な改善の有無をみるために血液検査はどれくらいの間隔ですればよいですか(月1回でいいですか?2-3回に1回は長すぎますか?Q5.(尿潜血の続きですが)検診では、毎年尿潜血陽性の方は多くの場合みられますが、その場合、Crは変わらなくても、それら全員に毎年少なくとも尿沈渣は施行するのが理想でしょうか?Q6.高齢者のBMI20未満でのCKDのstage4レベルの蛋白制限はしないという考え(1.2g/kgぐらい、一般的な1日の食事量)で、宜しいでしょうか?Q7.タンパク制限食について:eGFRはどれくらいからどのような指導をすれば良いですか?Q8.HIF-PH阻害剤で、鉄欠乏ですと、血栓症リスク増とのことですが、その理由・機序はどうしてでしょうか?(急に赤血球が増加しての血栓なら分かりますが)、Q9.MRAによるinitial dipはSGLT2阻害剤で回復しますか?Q10.高血圧無しの糖尿病の患者:尿aibが出だした早期からケレンディアを処方した方がよいですか?その場合一生処方した方がよいですか?Q11.糖尿病無し、心不全無しのCKDにSGLT2阻害剤を出すべき症例はありますか?Q12.IgA腎症で蛋白尿なし、血尿のみも場合、SGLT2阻害剤は効きますか?Q13.SGLT2阻害剤開始時はeGFR15以上で、年数が経ちeGFR低下し、15以下になった時SGLT2阻害剤は止めるべきですか?(どれくらいで止めれば良いですか?Q14.Ca正常の高P、低P血漿の対処はどうすれば良いですか?
■講師 安藤重輝 先生(東北医科薬科大学若林病院腎臓内科准教授)
<略歴>
97年 東北大学医学部卒業
03年 東北大学大学院卒業 医学博士
03年 山形市立病院済生館 内科 腎臓内科
08年 仙台社会保険病院 現 JCHO 仙台病 ))腎センター
10年 石巻赤十字病院 内科 副部長 腎臓内
14年 NTT 東日本東 北病院 内科科長 腎臓内科
16年 東北医科薬科大若林病院人工透析センター長
17年 東北医科薬科大学 血液浄化部病院 准教授兼任
<資格>
日本内科学会総合内科専門医
日本腎臓学会専門医・指導医
日本透析医学会専門医
臨床研修指導医