コロナの時代における、好酸球性鼻副鼻腔炎と重症スギ花粉症に対する生物学的製剤について
ステロイドか生物学的製剤かなど現場目線の論点を交えて
■講師 松根彰志 先生(日本医科大学武蔵小杉病院耳鼻咽喉科学 教授/武蔵小杉病院耳鼻咽喉科学 部長)
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【セミナー概要】
近年、難治性疾患や重症化リスクが問題となる疾患に対する生物学的製剤の役割、重要性が増しています。
最近本邦では、今年7月にパンデミック状態にあるCOVID-19に対して、抗体カクテル療法が製造販売の特例承認を取得しました。この製剤は、原因ウイルスであるSARS-CoV-2のスパイクタンパク質の受容体結合部位に2種類の抗体、カシリビマブおよびイムデビマブが非競合的に結合することで、SARS-CoV-2に対する中和活性を示します。まさに今話題の治療方法の1つであります。
今回の医療技術セミナーのテーマである鼻副鼻腔炎治療の分野でも、難治性・易再発性の鼻茸を有する鼻副鼻腔炎(好酸球性鼻副鼻腔炎)に対する治療薬として抗IL-4、IL-13受容体抗体(デュピルマブ)が、重症スギ花粉症に対する治療薬として抗IgE抗体(オマリズマブ)が昨年から保険診療として行えるようになりました。これらの製剤は、臨床試験段階で良好な成績が得られ診療現場での効果が期待されていました。実際使ってみて確かによく効いています。また、副作用の点でも現時点で問題無さそうです。当科では、「適正使用」に基づいて治療法の1つの選択肢として生物学的製剤を大いに活用しています。そして、治療成績や安全性のみならず、血液中の好酸球数、総IgE値、その他の生物学的指標の推移も検討しています。これらのデータをもとに、画期的ともいえる生物学的製剤の、他の治療法との整合性(手術、ステロイドなどの薬物治療)を含めたいくつかの論点をお話させていただきます。最近の抗体カクテル療法にも触れつつ、現場目線で役立つお話をと思っております。ご参加をお待ちしております。10:00〜12:00午前の部
12:30〜14:30午後の部
<内容>
1.生物学的製剤とは
2.話題COVID-19に対する抗体カクテル治療
3.好酸球性鼻副鼻腔炎について。
4.好酸球性鼻副鼻腔炎に対するデュピルマブ治療
作用点、適用、使用法、臨床試験成績
5.アレルギー性鼻炎・花粉症について。
6.重症スギ花粉症に対するオマリズマブ治療
作用点、適用、使用法、臨床試験成績
7.好酸球性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎の病態を確認
8.当科における生物学的製剤の使用の現状(1)
効果、安全性、生物学的指標の変動
9.当科における生物学的製剤の使用の現状(2)
ステロイド使用について
その他の問題点、論点、
10.生物学的製剤の今後への期待
*順番が多少変更の可能性があります。
セミナー要綱
セミナーNO. | 670 |
開催日 | 2021年10月24日 10:00〜14:30 |
講師 | ■松根彰志 先生(日本医科大学武蔵小杉病院耳鼻咽喉科学 教授/武蔵小杉病院耳鼻咽喉科学 部長) |
診療科目 | 耳鼻咽喉科系 |
DVD価格 | 5,500円(会員価格/税込) |
終了したセミナーの報告と開催の模様
■10月24日(日)に開催しました第670回医療技術セミナー『コロナの時代における好酸球性鼻副鼻腔炎と重症スギ花粉症に対する生物学的製剤について−ステロイドか生物学的製剤かなど現場目線の論点を踏まえて』は盛会裏に終了しました。
講師には、日本医科大学耳鼻咽喉科教授/附属武蔵小杉病院耳鼻咽喉科学部長であります松根彰志先生をお招きしました。これで5回目で、これまでの講義を確認しますと、?『他科の実地医家も知っておきたい花粉症と鼻アレルギー診療のコツと注意点』(2017年7月;#439)、?『花粉症とアレルギー性鼻炎治療における舌下免疫療法の実際』(2018年5月;#475)、?『これから舌下免疫療法を始める実地医家へ』(2019年4月;#518)、?『コロナ禍と花粉症の治療』(2021年3月;#653)の4回です。
今回のセミナーの講義の組立は以下の通りでした。
1.生物学的製剤とは
2.話題COVID-19に対する抗体カクテル治療
3.好酸球性鼻副鼻腔炎について。
4.好酸球性鼻副鼻腔炎に対するデュピルマブ治療
作用点、適用、使用法、臨床試験成績
5.アレルギー性鼻炎・花粉症について
6.重症スギ花粉症に対するオマリズマブ治療
作用点、適用、使用法、臨床試験成績
7.好酸球性鼻副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎の病態を確認
8.当科における生物学的製剤の使用の現状(1)
効果、安全性、生物学的指標の変動
9.当科における生物学的製剤の使用の現状(2)
ステロイド使用について
その他の問題点、論点、
10.生物学的製剤の今後への期待
当日の講演をお聞きして確認できたことは、鼻の疾患としては、かつては「慢性副鼻腔炎」(蓄膿症)が多かった(特に小児)のに、1994年に報告された「好酸球性副鼻腔炎」が主流になり、その疾患は嗅覚を失い、治りにくい、かつ子供ではなく成人の疾患としての特徴を持ち、治療が難しいところで、気管支喘息やアレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎と結びつき、治療も予防も深刻な状況になっているとのこと。
一方で、花粉症もスギ花粉を初めとした多様な花粉症とアレルギー性疾患が進行している状況で、これまでのステロイド治療なのか、新しく始まっている生物学的製剤治療なのか・・・どう選択するかというお話でした。また、松根先生が独自に開発されなさっているカテーテルを用いたステロイド局所治療を動画を駆使した解説も行われました。
結論としては、生物学的製剤は効くが、、まだまだステロイド治療も必要である・・・というところかと理解しましたが、詳細は、ぜひDVDやTEXTでご確認いただきたく存じます。
質疑としては、私も「鼻茸」についてお聞きしましたが(粘膜、あるいはポリープ様のもの)、ネット受講者からは、「鼻うがい」の有効性等に関する質問等がたくさん寄せられ、盛り上がりました。
■講師 松根彰志 先生(日本医科大学武蔵小杉病院耳鼻咽喉科学 教授/武蔵小杉病院耳鼻咽喉科学 部長)
<略歴>
1959年大阪市中央区出身
1984年鹿児島大学医学部卒業
1988年鹿児島大学大学院医学研究科博士課程修了
1988年〜90年ピッツバーグ大学(米国ペンシルバニア州)留学
2000年鹿児島大学耳鼻咽喉科助教授
2007年鹿児島大学大学院医歯学総合研究科准教授
2011年日本医科大学武蔵小杉病院耳鼻咽喉科部長(現在に至る)
2015年日本医科大学耳鼻咽喉科学教授(現在に至る)