肺炎の画像診断、鑑別診断、抗菌薬の適正使用を中心に

■講師　山口佳寿博 先生（東京女子医科大学睡眠総合診療センター　センター長）
>講師詳細はこちら 
 

【セミナー概要】
本邦において、肺炎は悪性新生物、心疾患、脳血管障害に次ぐ死亡原因の第4位を占め、その死亡数は1980年以降明確に増加している。
さらに、社会の高齢化によって肺炎を惹起する原因微生物は一般細菌から抗酸菌、真菌、原虫と多様化が進んでいる。1940年以降、これらの原因微生物に対する抗菌薬の開発が積極的に進められβ-ラクタム薬、マクロライド、アミノ配糖体、ＳＴ合剤、ニュ−キノロンを含む多数の抗菌薬が臨床の現場で使用できるようになった。
本医療技術セミナ−では；1)多様化した肺炎原因微生物（細菌、結核菌、非結核性抗酸菌、真菌）を胸部画像から推定するために必要な画像読影（単純X-P、CT）の基礎（鑑別診断を含む）、2)耐性機序からみた抗菌薬の適正使用、3)抗酸菌感染症（結核、非結核性抗酸菌）の診断と治療、4)カリニ−、アスペルギルスを中心とする真菌感染症の診断と治療、について学ぶことを目的とする。
1.肺炎における画像診断の基本
・小葉レベルにける病変の分布
・陰影の性状（スリガラス陰影、浸潤陰影）
・肺炎の進展−小葉性肺炎、肺胞性肺炎
2.細菌感染に起因する肺炎の画像
3.肺炎の鑑別診断−非感染性浸潤陰影
・好酸球性肺炎（AEP、CEP）
・特発性器質化肺炎（COP）
・肺胞充満性疾患（肺胞蛋白症、肺胞出血）
4.細菌性肺炎に対する適正抗菌薬
5.抗酸菌感染症の画像、臨床像、治療
6.深在性真菌症の画像、臨床像、治療

セミナー要綱

終了したセミナーの報告と開催の模様

■5月31日(日)に開催しました第308回医療技術セミナー『肺炎診療の実地を極める−肺炎の画像診断、鑑別診断、抗菌薬の適正使用−肺炎球菌感染症、抗酸菌感染症（結核、HIV、非結核性）、深在性真菌症の画像、臨床像、治療を含む』は盛会裏に終了しました。
講師には、東京女子医科大学の山口佳寿博先生をお迎えしました。山口先生は、今年の4月からは、東京女子医科大学睡眠総合診療センターセンター長として、青山の研究所で研究を続けておられるとのことです。なお、山口先生のご登場は今回で4度目です。いつもの、一つのテーマに従い、歴史的経緯や背景から・・・いろんな方面からの総合的に全面にわたっての壮大なお話の展開ですが、今回もすばらしく、山口先生のすごさを身に染みて感じました。
講義の組立は、
1)肺炎の疫学、宿主免疫状態と原因微生物
2)肺炎における画像診断の基本
3)細菌感染に起因する肺炎の画像
4)細菌性肺炎に対する適正抗菌薬−耐性機序を考慮して−
5)肺炎球菌感染症予防におけるワクチン療法
6)抗酸菌感染症の画像、臨床像、治療
7)深在性真菌症の画像、臨床像、治療でありました。
なかでも、６章では、?結核菌感染症−結核菌新規導入後の自然経過、ＨＩＶ-related結核の疫学、?肺結核の臨床−臨床/病型分類、危険因子、?肺結核の画像診断、?結核の薬物療法、?非結核性抗酸菌症−画像診断と治療−M.kansasiiとMAC、等の話が続きましたが、主宰子も長くこの分野の仕事をやらせていただいておりますが、これまでお聞きしたことが無かった話が６０%はありました。
山口先生の、呼吸器疾患の診療への取り組みの原点は、感染症的なアプローチよりは、まず画像との取組み、読影と鑑別から臨床像の作成・・・なのだ、との強い思い入れをひしひしと感じました。
質問はネット受講者からはたくさん来ました。逆に、会場受講者の方々は、日常の診療での抗菌剤を中心とした薬物療法の話を期待されて来られた・・・と想像しますが、想像を絶するお話の壮大さと内容の深さと広さに、声なし・・・というところでした。
ある受講者は、「う〜ん、画像診断か」といううめきらしきものを残してお帰りになりました。
素晴らしいお話でした。

■講師　山口佳寿博 先生（東京女子医科大学睡眠総合診療センター　センター長）
【専門】呼吸病態生理学、睡眠呼吸障害、ＣＯＰＤ
＜略歴＞
79年慶應義塾大学大学院医学研究科修了
慶應義塾大学医学部内科学助手
82年ドイツMax-Planck実験医学研究所
留学
87年東京医科大学内科学第一
非常勤講師
91年慶應義塾大学医学部内科学
専任講師
00年 慶應義塾大学医学部内科学
助教授
04年佐野厚生総合病院副院長
10年東京女子医科大学教授
13年東京医科大学客員教授
＜指導医、専門医、認定医＞
日本内科学会認定医、
日本呼吸器学会指導医・専門医、
日本人間ドック学会認定医