食物アレルギーへの対応
経口免疫寛容、経皮感作など新しい概念を踏まえて
■講師 栗原和幸 先生(神奈川県立こども医療センター母子保健局 局長、アレルギー科部長)
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【セミナー概要】
小児のアレルギー疾患で、今一番、社会的関心の高いのは食物アレルギーでしょう。最初の問題は、客観的な信頼性の高い診断方法がないことです。診断の基本は経口負荷試験ですが、どこでもできる検査ではありません。しかも、従来の「血液検査をして陽性だったら除去を指導」では済まされない状況が出て来ています。新しく調べることができるようになったコンポネント特異的IgEの臨床的意味を理解し、食べることの危険性とともに、食べないことの危険性も理解して患者を指導する必要があります。誘発症状に対する適切な対応法(アタPは使うな、エピペンはいつ打つか、など)の指導も欠かせない項目です。自信を持って食物アレルギーに向き合えるようになりましょう。
皆様、奮ってご参加ください。
10:00-12:00
・ガイドライン:ガイドラインの骨子と必要最小限捉えておくべきこと。
・診断(特異的IgE、HRT、プリックテスト、経口負荷試験):血液検査も皮膚テストもそのまま信用してはいけない、蕁麻疹はアレルギーではない。
・疫学:乳幼児の卵、乳、小麦アレルギーの多くは自然寛解するが、後に発症して寛解しにくいものもある、アナフィラキシー死は極めて稀。
・食事指導:食べられるものは食べる、加熱でアレルゲン性は軽減するか、ピーナッツと他のナッツは別、青魚はアレルギーに良い、・・・
・誘発症状に対する対応:危険な症状な何か、便利なOD錠の抗ヒスタミン薬、いつアドレナリンを使うか、アタラックス-Pの問題点。
13:00-15:00
・特殊な食物アレルギー:食物依存性運動誘発亥アナフィラキシー、花粉−食物アレルギー症候群(口腔アレルギー症候群)、コチニール、エリスリトール。
・新しい概念(経口免疫寛容、経皮感作):食べることで食物アレルギーを予防・治療できるか、アトピー性皮膚炎が先か食物アレルギーが先か、食物アレルギーは皮膚から始まる。
・経口免疫療法、経皮免疫療法:新規の食物アレルギーの治療法、その効果と問題点。
・予防は可能か:妊娠中、哺乳中の予防的食物除去の是非、離乳を遅らせるべきか、積極的な予防は可能か
セミナー要綱
セミナーNO. | 242 |
開催日 | 2014年2月11日 10:00〜15:00 |
講師 | ■栗原和幸 先生(神奈川県立こども医療センター母子保健局 局長、アレルギー科部長) |
診療科目 | 一般医学系 |
DVD価格 | 5,500円(会員価格/税込) |
終了したセミナーの報告と開催の模様
■2月11日(祭・火)に開催しました第242回医療技術セミナー「実地医家のための食物アレルギーへの対応−経口免疫寛容、経皮感作などの新しい概念を踏まえて」は盛会裏に終了しました。
講師には、神奈川県立横浜こども医療センター母子保健局長/アレルギー科部長栗原和幸先生をお招きしました。
食物アレルギーを起こす食物としては、これまで卵、牛乳、小麦、蕎麦、ピーナッツ等が問題にされて離乳食の開始時期や内容等には注意が払われて来ましたが(興味深い事にイギリスでは3カ月位から、アメリカでは6ヶ月くらいから・・・と日本より早い)、最近は”茶のしずく”(石鹸)や、化粧品等でも問題が起きました。そこへ一昨年12月に調布市の小学校で、誤って禁忌のチーズを食べさせてアナフィラキシーーが起きた小5生が急死した事件が起こり、この問題が大きく取り上げられるようになりました。また、別に、保管中の小麦粉に付いたダニによるアレルギー事故も起こりました。そうした食物アレルギーに対して、医療・医師の側からの対応をいかにすべきか、多くの受講者にお集まりいただきました。
講義の組立は、1.現状−基本と問題点(食物アレルギーの定義、診療ガイドライン、疫学、症状、診断、治療、特殊型)、2.新しい展開(アレルギー発症についての考察、継母乳感染、経皮感染、フィラグリン、皮膚バリアー、アトピー性皮膚炎や花粉症との関連性、経口免疫療法、新しい予防策)というものでした。特殊型には、?新生児乳児消化管アレルギー、?食物依存型運動誘発アナフィラキシー、?口腔アレルギー症候群(花粉症)、?ラテックスアレルギーが特に挙げられました。
栗原先生によれば、アレルギーを起こさない食物は無いのだが(要するに障害の程度が問題)、新しくアレルギーを起こすものにカニやや魚卵(いくら)が増えてきている。また、子供だけでなく大人も。一般には大人になったら自然に治ることが多いのに、子供の時には良かったのに、大人になってからダメになったりする例もある。さらに、食べるだけでなく、触ったりしての経皮のアレルギー、花粉症と関連するアレルギー、特にスギ花粉に加えてハンノキの花粉によるアレルギーも出てきている(ヨーロッパにはもともとシラカバによるアレルギーがあったが、その日本版とも考えられる)。
新しいガイドラインは、食物経口負荷試験を必修化しているが、なかなか条件が整わない・・・。
議論になったのは、調布市の小学校での事件以来、教師がエピペンを打つようにプレッシャーがかけられてきているが、そうした一種の医療行為を教師が行うことの問題点や責任の所在、現場の混乱やとまどい・・・が指摘され、難しい問題である・・と危惧する意見が出されました。
■講師 栗原和幸 先生(神奈川県立こども医療センター母子保健局 局長、アレルギー科部長)
<略歴>
77年千葉大学医学部卒業
80年神奈川県立こども医療センターアレルギー科シニアレジデント
82年東京慈恵会医科大学小児科助手
83年神奈川県立こども医療センターアレルギ−科医員
86年ロンドン大学付属国立心肺研究所アレルギー・臨床免疫部リサーチフェロー
88年都立母子保健院小児科医員
92年国立相模原病院小児科医員
93年神奈川県立こども医療センターアレルギー科部長
13年より神奈川県立こども医療センター母子保健局長、アレルギー科部長
<著書>
アレルギー疾患の免疫療法と分子標的治療―理論と実践、(診断と治療社13年共著)、
食物アレルギーAtoZ(第一出版、2010年、共著)
食べて治す食物アレルギー–特異的経口耐性誘導−(診断と治療社、2010年)
よくわかる食物アレルギー(MSクリエイト、2010年)
<学会活動・資格>日本小児科学会(専門医)、日本小児アレルギー学会(評議員、薬務委員、編集委員、治療・管理ガイドライン改訂委員研究推進委員、第47回学術集会会長)、日本アレルギー学会(代議員、認定専門医・指導医、編集委員)
日本メディカルスキルアップは対面形式のセミナー(会場受講)を重視し、2009年4月より計800回以上医療技術セミナーを開催してまいりました。製薬企業とは無縁の独立系セミナーで、臨床現場、専門領域の第一線で活躍する講師の質と圧倒的な学習時間で医療業界に貢献してまいります。一般医学系の他、さまざまなジャンルのセミナーを開催しております。