関節痛診療シリーズ1 関節痛の鑑別診断と治療(4回シリーズ)
膠原病を見逃さないためのアプローチ
■講師 岸本暢将 先生(杏林大学附属病院膠原病科 准教授)
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【セミナー概要】
〜膠原病の大原則〜
リウマチ性疾患や骨格筋疾患は診断や治療が難しいと考えている医師が非常に多いようです。高齢者の2人に1人が関節痛を訴えるという現在、一般内科やプライマリケア医でも整形外科へあっさり紹介するばかりではいられません。関節痛が実は感染症であったり、悪性腫瘍の一症状として出ていたりと、プライマリケアである程度の診断をつけることは非常に重要なのです。
「プライマリケアでもできる関節痛患者を診たときの病歴聴取、身体診察のポイント」を解説し、リウマチ膠原病疾患へのアプローチの大原則を示します。
皆様、奮ってご参加ください。
■講演プログラムおよび要旨(受講者各位の録画・録音は固くお断り
申し上げます)
午前10:00−12:00
関節痛へのアプローチ〜日常診療で遭遇する関節炎の鑑別疾患〜
午後13:00−15:00
膠原病を疑って行う検査について〜無駄な検査は必要ない〜
第一回
1.関節痛患者へのアプローチ
〜膠原病の大原則〜
リウマチ性疾患や骨格筋疾患は診断や治療が難しいと考えている医師が非常に多いようです。高齢者の2人に1人が関節痛を訴えるという現在、一般内科やプライマリケア医でも整形外科へあっさり紹介するばかりではいられません。関節痛が実は感染症であったり、悪性腫瘍の一症状として出ていたりと、プライマリケアである程度の診断をつけることは非常に重要なのです。
「プライマリケアでもできる関節痛患者を診たときの病歴聴取、身体診察のポイント」を解説し、リウマチ膠原病疾患へのアプローチの大原則を示します。
2.膠原病を疑って行う血液検査について
〜無駄な検査は必要ない〜
「抗核抗体陽性」だから、「リウマトイド因子陽性」だから膠原病科コンサルト!、と訳もわからずいろいろな検査を提出していませんか結局迷うだけで無駄な追加検査が増えてしまいます。どのような時に抗体検査を提出し、どのように解釈をするか解説いたします。抗核抗体をどのように使いこなすか、関節リウマチの診断で最近話題の抗CCP抗体の有用性や注意点についても
解説します。赤沈を含め炎症反応の見方についても解説します。
セミナー要綱
セミナーNO. | 154 |
開催日 | 2012年6月3日 10:00〜15:00 |
講師 | ■岸本暢将 先生(杏林大学附属病院膠原病科 准教授) |
診療科目 | 総合診療系 |
DVD価格 | 5,500円(会員価格/税込) |
終了したセミナーの報告と開催の模様
■6月3日(日)に開催しました第154回医療技術セミナー「関節痛診療シリーズ1関節痛の鑑別診断と治療−関節リウマチや膠原病を見逃さないためのアプローチ−」は盛会裏に終了しました。
講師には聖路加国際病院アレルギー膠原病科(成人、小児)の岸本暢将先生をお招きしました。岸本先生には、今回「関節痛診療シリーズ」として全4回で企画していただきましたが、昨年12月9日にも「不明熱」を切り口に「関節痛」「関節リウマチ(RA)」「膠原病」を取り上げていただいたことは記憶に新しいところです。
かつては難病の一つであった関節リウマチも、近年ではステロイドや生物学的製剤の開発等で進行を抑えたり、治ることも期待できるようになったようです。
講義は、午前中が「関節痛へのアプローチ」として、「関節炎の鑑別診断」を取り上げていただきました。また、午後は、「膠原病を疑って行う検査について−無駄な検査は必要ない−」ということで、お話しいただきました。
岸本先生は、冒頭、関節の疾患を診るときの注意として、単関節(の症状)なのか、少関節なのか、多関節なのか、そして関節所見として分布はどうなのか発症様式はどうなのかなどの、これまでの採用されてきた分類基準と最新のヨーロッパやアメリカで定められた新しい診断基準の解説から始められました。その後、高齢者に発症しやすい関連疾患の例として変形性関節症、化膿性関節炎、急性単関節症、多発性筋痛症等の症例をお示しになりました。また、更年期の関節症例、普通の成人の反応性関節炎の症例、ソーセージ指としてでてきた乾癬性関節炎の症例、脊椎関節炎、遊走性関節炎、SLE、シェーグレン症候群等について解説をしてくださいました。また、見逃してはいけない疾患として、ウイルス性の関節炎、急性B型肝炎の関節炎(インフルエンザ様の症状を呈する)、C型ウイルスにもあり、成人パルボウイルス(りんご病)でもあって、その数々の詳細について解説されました。
午後の「膠原病を疑って行う検査について」では、膠原病の診断・治療に必要な検査として、免疫異常(自己免疫)、炎症、臓器病変、その他、の4つの指標を挙げて詳細に解説していただきました。
いつ聞いても相変わらずのお話上手と頭脳明晰さ、まだお若いのによくもまあこれだけ多くの症例や技術、知識をもっておられるものだなあと感心させられます。さすがのS先生も、この日ばかりは居眠りをなさいませんでしたよ。また、この日は整形外科のS先生、被災地の石巻よりおいでいただきました。復興は順調のようです。ありがとうございました。
この日は、講義中に入院中の患者さんのことで研修医の方からか、電話が架かってきて、的確な指示を出されるとともに、昼休みを利用して病院にも往復されました。主宰者としては、受講者の方には申し訳なく思いますが、お互いが患者さんを抱えながらの勉強の途中のハプニング、寛大なご配慮に深い感謝の意を表する次第です。
講義から、若干外れますが、この領域の疾病の名称が、国際的な審議の場で検討されており、永年使用されて定着している名称がいろんな理由で変更されたり、変更されそうなものがあるのだそうです。例えば、変更されたのは「ウエゲナー肉腫」ですが、これを発見したウエゲナーという医学者は、ドイツのナチスの研究者だったとの理由で、GPAという名称に変わったそうです。他には、Reiter症候群のReiterもまたナチスの研究者であったとして中江が変わったとのこと。他に、変わりそうなものに、大動脈炎に炎症がおこる自己免疫疾患である「高安病」があるとのことですが、反対意見が強いので変わらなさそう、とのこと。「高安病」といえば、「橋本病」とともに、日本の研究者の名前で呼ばれる数少ない疾患名称の一つで、発見・研究をされた金沢大学を中心に反対意見が強いのだそうです。他には川崎富作先生の「川崎病」もだそうです。あんまりですよね。
■講師 岸本暢将 先生(杏林大学附属病院膠原病科 准教授)
<略歴>
98年北里大学医学部卒業/沖縄県立中部病院研修医
00年在沖縄米国海軍病院インターン
01年ハワイ大学内科レジデント
04年ニューヨーク大学/HospitalforJoint
Diseasesリウマチ膠原病科フェロー
06年亀田総合病院リウマチ膠原病内科プログラムディレクター
同年米国リウマチ学会DistinguishedFellowAward受賞
07年東京大学アレルギー・リウマチ内科、東京医科歯科大学臨床医学教育開発学、北里大学総合診療科非常勤講師兼務
09年聖路加国際病院Immuno-RheumatologyCenter