終末期医療へのチームアプローチ−病院から在宅までの終末期医療を支える−
絶対に燃え尽きない在宅医療のチームを作るための3つの秘訣(新春謝恩講演会;在宅医療を支援する!!?)
■講師 和田浄史 先生(川崎協同病院外科 科長)
>講師詳細はこちら
【セミナー概要】
<開催のねらいとお誘いの言葉>
病棟においても在宅医療においても、患者さんの終末期医療を支えるのは多職種からなる医療チームです。風通しのよいチームが、さらに患者さんやご家族と強力なタッグを組むことで、患者さんの人生の最期をよりいっそう輝かせることができます。終末期における患者さんの自己決定権を尊重し、真のQOL向上に寄与するには、どのようなチームアプローチが求められるのでしょうか。
終末期に発生する様々な倫理的ジレンマを乗り越え、スタッフが燃え尽きることなく生き生きと終末期のケアにかかわるためには、患者さんやご家族の情報の共有だけでなく、スタッフやご家族も含め、患者さんを支えるチームのビジョンが患者さん本人のビジョンと一致していることが最も大切です。
患者さんのかかえる様々な恐怖や苦悩と正面から向き合い、患者さんの本当の思いを汲み取って実現するためのノウハウと、患者さんと医療者がともに満足できる関係の構築について、在宅医療を支える全てのスタッフに向けてお話させていただきたいと思います。皆様、奮ってご参加ください。
■講演プログラムおよび要旨(受講者各位の録画・録音は固くお断り申し上げます)13:30-15:30
(1)チームアプローチの重要性
(2)タブーをつくらないこととタイミングをのがさないこと
(3)倫理的ジレンマを乗り越え、絶対に燃え尽きないチームを作る3つの秘訣
(4)緩和ケアに携わるスタッフのプロフェッショナリズムとは
−Win-Winをめざそう−
この日、午前10時30分より12時30分まで、同じ会場にて、「在宅医療専門の訪問クリニック」で高名なたかせクリニック顧問鳥谷部俊一先生の、テーマ「最新褥創のラップ療法・開放性湿潤療法(OpWT)」の講演会を開催します。なお、2つともご参加になる方はお弁当を準備しますので、前もってご登録下さい。
皆様、奮ってご参加下さい!
セミナー要綱
セミナーNO. | 73 |
開催日 | 2011年1月10日 13:30〜15:30 |
講師 | ■和田浄史 先生(川崎協同病院外科 科長) |
診療科目 | 一般医学系 |
DVD価格 | 5,500円(会員価格/税込) |
終了したセミナーの報告と開催の模様
■1月10日(月・祭)の午後に開催しました第74回医療技術セミナー「終末期医療へのチームアプローチ−病院から在宅までの終末期医療を支える−;倫理的ジレンマを乗り越え、絶対に燃え尽きない医療チームを作る3つの秘訣」は盛会裏に終了しました。
講師には、川崎協同病院外科科長和田浄史先生にお願いしました。和田先生には、昨年の10月3日に、医療セミナー「外傷治療」の講師をお願いして以来の2回目になりましたが、今回も素晴らしいお話で感動させられました。
講義は、?チームアプローチの重要性(→患者さんや家族の考え方や好み等の細かい事情まで、チームスタッフの一人ひとりが知りえた状況を報告し共有し合い、共通のスタンスで対応する必要がある)、?タブーを作らないこととタイミングを逃さないこと(→終末期医療においては、常識的に考えたら非倫理的でとんでもないことを含めて”何でも有り”に近く(タブーは何にも無い!)、患者さんの考えや希望、祝いごと等のタイミングを失しないようにする。また、一方的な考え方や価値観の押付けにならないように配慮する、?倫理的なジレンマを乗り越え絶対に燃え尽きないで何でも行動する医療チームを作る必要があり、そのための3つの秘訣(→死を免れられない、病が完治しない状況では、倫理的ジレンマを克服して、厳然たる病状の評価を共有する、患者の理想と希望を知り共有する、周囲の状況を把握し共有する。そのためには”何でも発言できる医療チームのカンファレンス”=「臨床倫理4分割シート」による討議を行う必要あり。また、”医療者の喪失感”を克服することこそ重要であり、「亡くなった患者を偲ぶカンファレンス」等で”精神的なけじめ”を早期につけてしまう必要がある)、?緩和ケアに携わる医療スタッフのプロフェッショナリズムとは−WinWinをめざそう−(→”最高の技術を提供する”エキスパートと”相手が望む高い技術を提供する”プロフェッショナルとは違い、我々はプロフェッショナルであるべき。様々な関わりのある色々な方々の立場に立つには共感と想像が必要。どんな困難な状況でも患者さんの幸せのために尽くすことで自らも幸せになれるというWinWinの関係をめざそう。患者の幸せ度を示す指標としてのQOLの向上とはHappiness幸福、Satisfaction満足、Harmony調和の3つが向上することだけをめざそう!なお、最後に「医者としての最高の喜びは、看取った患者さんの家族は来にくいし診にくいものだが、患者として来てくださることが一番うれしい・・とのこと)が、お話の概要でしたが、提示された症例や事例の数々が、何とも愛と気遣いに満ち満ちており、思わず涙を流してしまいました。
質疑応答では、事例の再確認のやりとりをはじめとして大いに盛り上がり、”安楽死”を容認するのかとか、逆に”尊厳死”やそれを否定する”延命治療の是非”等にも話が及びました。
それらの議論の中で、和田先生は川崎協同病院で約10年前に起きた不幸な事件を契機に、そうした医療上のタブーにも倫理委員会を作って議論を尽くして病院の方針をまとめているところであることや、「差額ベッド」料金システムがなく、”個室”はお金がある患者のためでなく、病状や治療に必要な方にのみ提供されるとの考え方・原則でやっている・・・・というお話に、会場から羨望の溜め息が漏れておりました。
あまりにも感動的なお話であったためか、会場が明るくなって見ると、目の周りを赤くしている方が多く、終わってもいつまでも和田先生を取り囲み質問をされる受講者の群れが崩れませんでした。
■講師 和田浄史 先生(川崎協同病院外科 科長)
<略歴>
92年横浜市立大学医学部卒業後、同大学病院で初期研修
94年横浜市立大学第二外科学教室に入局、横浜市立市民病院外科
95年国立横浜病院外科
96年横須賀共済病院外科
97年横浜市立大学医学部附属浦舟病院第2外科
98年退局し、川崎医療生活協同組合川崎協同病院外科医長
08年同科長(現職)