「虫」による皮膚疾患の診断と治療
疥癬、シラミ、虫さされ、など
■講師 大滝倫子 先生(九段坂病院皮膚科 顧問)
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【セミナー概要】
疥癬は高齢者のみならず、あらゆる世代を巻き込み、いまだに感染を繰り返しております。病院や施設での集団発生を防ぐためには正確な診断が求められています。正しい診断のためのダニの検出方法、内服薬・外服薬の使用方法、治療判定、後遺症、予防措置などにつき、実践的な解説を加えます。また、シラミやよく遭遇する皮膚疾患の虫刺されについても解説いたします。皆様、奮ってご参加下さい。●10:00-12:001.疥癬の診断と治療
?ヒゼンダニの形態・生態など
?疥癬の診断、他の症候との鑑別
?イベルメクチンの使用法など
?治癒判定、後遺症、など
●12:00-13:00昼食・休憩
●13:00-15:002.シラミ
?アタマジラミとケジラミとの区別
?薬剤によらない治療は可能か
3.虫刺され
?虫刺されに個人差のある理由
?虫の種類による皮疹の特徴
?ハチ刺されに対する対応など
セミナー要綱
セミナーNO. | 55 |
開催日 | 2010年7月4日 10:00〜15:00 |
講師 | ■大滝倫子 先生(九段坂病院皮膚科 顧問) |
診療科目 | 皮膚科系 |
DVD価格 | 5,500円(会員価格/税込) |
終了したセミナーの報告と開催の模様
■7月4日に開催しました第55回医療セミナー「『虫』による皮膚疾患の診断と治療−疥癬、シラミ、虫刺され、など−」は盛会裏に終了しました。
講師には、国家公務員共済組合連合九段坂病院皮膚科顧問の大滝倫子先生をお迎えしました。
午前は今一番人を困らせている虫であります「疥癬」を取上げていただきました。疥癬はヒゼンダニによる動物性皮膚疾患で、ヒトの手や足の角質に雌と雄とでトンネルを作り込み、その中で交尾をし、卵を産み、蛹になり、成虫になり、また卵を産む等、生活・潜伏し、感染させる疾患です。しかも、トンネル内で排泄された便がアレルギー反応を起こし痒みを生じる。歴史的には、ナポレオンは戦に負けたのではなく疥癬に負けたという逸話や、幕末期に吉田松陰が密航を企てたが断られたのはやはり疥癬まみれだったからとのこと。これまで30年周期で流行ったり廃れたりを繰り返しており、かつては”性感染症”として海外から入ってきて、若者とその子どもの病気であったのが、今では60歳以上の高齢者と介護者を中心にあらゆる世代を巻き込む病気になってしまっているとのこと。また、現代では疥癬を診断できずに慢性の湿疹や脂漏性皮膚炎、アトピー性疾患として誤って診断され、ステロイドの投与を受けて悪化して、”角化型疥癬”にしてしまいなかなか治り難いし、集団感染の可能性も出てきてやっかいなことになる怖い疾患であるとのご指摘で、診断の方法や注意点等、さまざまな観点からの解説が行われました。薬物療法の可能性では、これまでのイベルメクチンに代わって、ペルメトリンがよく効くが、この薬剤は日本では未認可で個人輸入で入ってきている段階であるの(お問合せをいただければ代理輸入できる方をご紹介できます)と、今年の8月からはスミスリンの治験が始まるので、期待して欲しいとのことでした。また、オイラックスは、もともと殺鼠剤として開発されたもので毒性が強く、かゆみ止めとしても(実際に効かない)、治療薬としても使わない方がよいとのご注意でした。
午後の講義では、昆虫類・ダニ類による皮膚症を取上げていただき、蚊、蚤、シラミ、ブユ、アブ、ハチ、蟻、シバンムシ、ドクガ等の昆虫と、イエダニ、デモデックス、クモ、ムカデ等のダニ類、その他ツツガムシ病、マダニによる日本紅斑熱病、ライム病、ヤリヒョウヒダニ、コナヒョウダニなどによる疾患等、たくさんの虫体の紹介や皮膚症のスライドを見せてくださり、病態の解説や、対策・注意点につき、解説していただきました。
■講師 大滝倫子 先生(九段坂病院皮膚科 顧問)
横浜市立大学医学部卒業
東京医科歯科大学大学院修了
東京医科歯科大学皮膚科助手、同講師
九段坂病院皮膚科医長、現在同顧問