診療でぶつかる問題。こう解決したら！

■講師　安保徹 先生（新潟大学大学院医歯学総合研究科国際感染医学　教授）
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【セミナー概要】
医学の最大の目標は病気の成り立ちを解明し、原因に沿った根本治療にたどり着くことではないでしょうか。ここで必要なのが基本調節系としての「自律神経」と、からだの防御系としての「白血球」の理解です。この自律神経の支配は白血球にも及んでいます。このため、ストレス→交感神経緊張→顆粒球増多→組織破壊、という流れで多くの病気が生まれます。今回の講演では、さらに「エネルギー生成系」の理解が得られるような話を加えます。発ガンの本当のメカニズムにたどり着くことができるでしょう。●14:00-16:00
臨床医家のための免疫学−日常診療でぶつかる問題。こう解決したら！
病気の成り立ちを知るためには、ストレスの生体反応を理解する必要がある。ストレスは交感神経緊張と糖質コルチコイドの分泌を誘発する。弱いストレスの時は代謝を亢進させて生き続ける。一方、強いストレスの時はこれらの反応も強く起こり低体温と高血糖を招く。短いスパンで見ると、これもからだにとって有益な反応である。エネルギー生成系の理解がこれを明らかにできる。酸素無しと低体温でエネルギーを生成する解糖系と、酸素下と高体温でエネルギーを生成するミトコンドリア系がある。前者は瞬発力と分裂に使われ、後者は持続力に使われる。ストレスで生じた体調は解糖系を働かせるにはプラスなので、瞬発力を得て危機を乗り越える力となる。しかし、ストレスが長引くと低体温と高血糖の体調が続き病気となる。ミトコンドリア系側のエネルギー生成が抑制され、エネルギー不足（疲れ）と蛋白合成抑制（やつれ）が来るからである。解糖系の持続は分裂促進なので発ガンとつながる。

セミナー要綱

終了したセミナーの報告と開催の模様

■5月16日の午後に開催されました第47回医療セミナー「臨床医家のための免疫学−免疫力を高める各種療法とその実際」は盛会裏に終了しました。
講師は、今も多くの著作を生み出され、しかもそれらのほとんどがベストセラーになってしまう新潟大学免疫学教授の安保徹先生にお願しました。日頃多く開催しております臨床分野・領域のセミナーではなくて、強いて言えば”基礎医学”分野のテーマである今回の企画も、「創業一周年記念謝恩企画」と命名して、ようやく企画が実現しました。
講義は、安保先生、お得意のストレスとリラックスが交感神経と副交感神経の昂進・制御に影響し、（人間が生きて行く上で経験する）ひもじさ、怯え、恐怖感等のストレスが→低体温・高血糖化による”危機の乗り切り”につながっていく。基本的防御細胞であるマクロファージから、顆粒球とリンパ球に進化する過程で、いろいろな疾病がすべて説明できるとして、パーキンソン病、アトピー性皮膚炎、関節リウマチ、びらん性胃炎、痔疾等、さまざまな症状や疾病を説明され、その語り口はとつとつとした津軽弁ながら、明快で歯切れ良いものでありました。
次に、もっともお得意の癌のところでは、癌にはウイルス性のもの以外に、自律神経系のものが存在すること、や運動系には、解糖系の無酸素運動とミトコンドリア系の有酸素運動があるが、結局危機の乗り切りは無酸素運動が多くなること等、生命や人類の起源にまで触れる壮大なお話になりました（ぜひ、安保先生の「がんを治す４カ条」を確認・学習してください）。
また、安保先生は、ネット受講者からの質問に答えて、ぜひ読んでほしい本として、著作の中で「医療が病気をつくる」（岩波書店；’01年）、「免疫革命」（講談社インターナショナル；’03年）の2点を挙げられました。
また会場で受講された先生からは、「本当にインパクトのある素晴らしい講義であった」との感想が寄せられました。
 

■講師　安保徹 先生（新潟大学大学院医歯学総合研究科国際感染医学　教授）
1947年青森県東津軽郡に生まれる
1972年東北大学医学部卒業
1980年アメリカ･アラバマ大学留学中に「ヒトNK細胞抗原CD57に対するモノクローナル抗体」を作製。
1990年胸腺外分化T細胞を発見
1991年新潟大学医学部教授
1996年白血球の自律神経支配のメカニズムを世界で初めて解明
2000年マラリア感染の防御は胸腺外分化Ｔ細胞によって行なわれることを発見