めざましい進歩を遂げるパーキンソン病の診断と治療戦略
■講師 藤本健一 先生(自治医科大学神経内科 准教授)
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【セミナー概要】
10:00-11:00第一部パーキンソン病とパーキンソン関連疾患の鑑別
パーキンソン病(PD)の有病率は人口10万対120〜150人で、4半世紀の間に倍増した.しかし、パーキンソン症状を呈する患者全員がPDとは限らない.脳血管障害や薬剤性疾患、MSA-P、PSP、CBDなどの変性疾患、正常圧水頭症などの鑑別が重要である.臨床症状からの鑑別点を中心に解説する.
11:00-12:00第二部パーキンソン病のドパミン補充療法
1958年にCarlssonらが大脳基底核でドパミンを発見して以来、PDのドパミン補充療法は急速に進歩した.L-dopaは今でも最強の治療薬ではあるが、吸収が不安定で作用時間が短いため、長期服薬するとwearing-off現象やジスキネジアなど運動合併症が出現する.その予防にドパミンアゴニストが用いられるが、幻覚や妄想などの精神症状を誘発し易く、麦角系は心臓弁膜症、非麦角系は突発的睡眠などの問題もある.運動合併症の治療にはこのほかMAO-B阻害薬やCOMT阻害薬が用いられる.薬物動態を考えた処方が重要である.
12:00-13:00昼食・休憩
13:00-14:00第三部脳深部刺激治療と遺伝子治療
PDでは従来の視床凝固術に加えて、視床下核や淡蒼球の脳深部刺激(DBS)が行われる.我々の施設では2000年4月の保険適応と同時にDBSを開始し、既に100例以上の治療を行った.その適応と問題点を議論する.さらに我が国初のPD遺伝子治療研究の成果と今後の展望について解説する.
14:00-15:00第四部脱抑制性行動障害と認知症
新薬やDBSによりPDの治療は急速に発展したが、衝動制御障害、反復常同行動、ドパミン調整異常症候群など脱抑制性の行動障害が頻発するようになった.生命予後が改善するとともに、PDは運動障害から精神障害の病気へと変貌を遂げた.さらにPDの病理学的特徴であるLewy小体が広範に出現するLewy小体型認知症への移行も問題である.本医療技術セミナーではこれらの問題点の学術的な解説でなく、症例への臨床的なアプローチを中心に解説する.
セミナー要綱
セミナーNO. | 40 |
開催日 | 2010年3月21日 10:00〜15:00 |
講師 | ■藤本健一 先生(自治医科大学神経内科 准教授) |
診療科目 | 神経内科系 |
DVD価格 | 5,500円(会員価格/税込) |
終了したセミナーの報告と開催の模様
■第40回医療セミナー「めざましい進歩を遂げるパーキンソン病の診断と治療戦略」は盛会裏に終了しました。
講師は、自治医科大学神経内科准教授の藤本健一先生にお願いしました。藤本先生は週に5日間外来診療に携わり300名以上のパーキンソン病(PD)を診ておられる根っからの臨床医でいらっしゃいます。講義は、4部に分けられ、午前は「パーキンソン病と関連疾患との鑑別診断」(第一部)と「ドパミン補充療法」(第二部)でした。第一部では、PDの有病率は人口10万人あたり120名から150名ということで、ここで倍増してきているとのこと。また、パーキンソン症状を呈する患者がPDとは限らないということで、脳血管障害や薬剤性疾患、MSA-P、PSP、CBDなどの変性疾患、正常圧水頭症等との鑑別のポイントから始められるとともに、第二部ではドパミン補充療法とその注意点についての解説が行われました。午後の「三部」の「脳深部刺激治療と遺伝子治療」では、最先端のかつ実績を上げ始めている実際の治療の原理、手法と実際について、「第四部」の「脱抑制性行動障害と認知症」では、PDの治療が進んでいる一方で、衝動制御障害、反復常同行動、ドパミン調整異常症候群などの脱抑制性の行動障害が増えて来ている実態と、レビー小体型認知症への移行の問題等、症例への臨床的なアプローチの解説が行われ、会場からだけでなく、ネット中継視聴者からも「素晴らしい講義」との称賛が寄せられました。
■講師 藤本健一 先生(自治医科大学神経内科 准教授)
1980年自治医科大学卒業
1980年筑波大学レジデント
1984年僻地診療所勤務
1985年自治医大大学院入学
1989年自治医大神経内科助手/
米国テネシー大学留学
1993年自治医大神経内科講師
1997年国療足利病院内科医長
2000年自治医大神経内科准教授、現在に至る