結核医療基準全面改正を受けて

■講師　御手洗聡 先生（結核研究所抗酸菌カンファレンス部　副部長）
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【セミナー概要】
結核は今なお公衆衛生上重要な感染症ですが、近年の罹患率の低下から顧みられることが少なくなっています。しかし、診断の遅れや集団発生事例、耐性結核菌感染など、現在でも問題は山積しています。むしろ結核罹患率の低下よりも診療経験や知識が失われるスピードの方が速いことが懸念されているのが現状です。
今回の医療技術セミナーではプライマリケア医における結核診断上の要点を、2009年2月1日に全面改正施行された結核医療基準にてらしながら解説し、さらにはクオンティフェロンTB2G/Gold検査法の使用法や解釈の仕方などを含む最新の診断技術についても解説を行いたいと思います。
また結核診断後の治療について、標準的な治療法や、標準から外れた場合の治療法について解説する予定です。さらに、新しい概念としての潜在性結核感染症の治療や間欠療法の導入についても同基準に沿う形で詳述します。
本医療技術セミナーを通じて、熱性疾患としては忘れられがちな「診療の落とし穴」的結核診療について再度思い出していただきたいと考えます。皆様、ふるってご参加下さい。
10:00-12:00第1部：結核とその類似疾患の鑑別診断〜最新診断法を含めて
結核は亜急性〜慢性の咳嗽・喀痰を伴う熱性疾患であり、病初期においては急性気道感染症（かぜ症候群）や一般の肺炎と間違われやすい。しかし、その疫学的あるいは放射線学的な所見の特徴を理解すれば、特殊な場合を除いて鑑別診断に苦慮することはあまりない。また細菌学的な診断技術も長足の進歩を遂げており、全結核の80％程度で細菌学的な確定診断が可能である。今回はこれらの方法について順を追って解説し、診断の遅れや見逃しを極力押さえるための診断手順について解説する。
12:00−13:00休憩
13:00−15:00第2部：結核の二つの顔：潜在感染と顕性感染の治療
結核に感染しても発病に至るのは10％程度である。患者の殆どは感染後1〜2年以内に発病するが、その後もいつ発病するかわからない。このような潜在感染〜顕性感染の経過を有する疾患では、感染を正確に把握して適切な発病予防策を講じることが重要である。このためには適切な潜在性結核感染診断法が必要であり、近年クオンティフェロンTB検査が広く利用されるようになりつつある。この検査法の利用法や結果の解釈について詳述する。また顕性感染に対しては結核菌が感受性か耐性かを的確に診断し、適切な治療を行わなければならない。結核の治療は多剤併用療法が基本であり、標準法以外にも多種の方法がある。副作用への対応等を含めて、治療法の現状について解説する。

セミナー要綱

終了したセミナーの報告と開催の模様

■11月22日（日）に開催いたしましたセミナー「プライマリケア医における結核の診断と治療上の注意点−結核医療基準全面改正を受けて」は盛会裏に終了しました。
講師には、財）結核予防会結核研究所抗酸菌レファレンス部検査科副部長御手洗聡先生にお願いしました。講義では、年とともに結核感染者が増えている日本における現状と高齢者、都市部に集中、超薬剤耐性菌の出現等の傾向が語られるとともに、最近は、診断の遅れと、一方で中国やフィリピン、ベトナム等、周囲の高汚染地域からの外国人の流入が増え、「輸入感染症」として増えており、若年者にも結核感染者が増え、同時にHIVウイルスにも感染している率も高まってきているとのこと。その後プライマリケア医における検査の仕方、結核診断上の要点を、本年2月に全面改正された「結核医療基準」に照らして詳細に解説していただきました。最後に、講義の中で「結核に感染しても発病に至るのは10％程度である。患者のほとんどは感染後１〜２年内に発病するが、その後もいつ発病するか分からない。このような潜在感染〜顕性感染の経過を有する疾患では、感染を正確に把握して、適切な予防策を講じることが重要である」という先生の言葉が、頭に残っています。

■講師　御手洗聡 先生（結核研究所抗酸菌カンファレンス部　副部長）
1988長崎大学医学部卒業
1995医学博士過程修了
1996国立療養所東京病院勤務（1998年6月よりJICA細菌学専門家としてザンビア共和国へ派遣）
2001結核予防会結核研究所疫学研究部臨床学科（医員）
2003結核予防会結核研究所抗酸菌レファレンスセンター細菌検査科長
2008結核予防会結核研究所抗酸菌レファレンス部副部長