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【セミナー概要】 漢方薬を診療に使いたい医師は多いのであるが、実際に使おうとしたときには、サイエンスに基づかない理解しにくい古典的運用法がネックとなる。歴史的にみると試行錯誤で出来上がった漢方薬が先で、古典的運用法は後付けに過ぎない。古典的運用法によらないで漢方薬を処方することを邪道と非難し認めない漢方の専門家も多い。しかし漢方薬は最近の研究で、薬理学が従来想定していなかった、超多成分の全く新しいタイプの薬剤であると考えないと、漢方薬を服用したあとに患者の中で起こることを説明できないことが明らかになりつつある。 これを踏まえて、今回の医療技術セミナーでは、サイエンス漢方処方という新しい切り口で漢方薬を認識し、新しい運用法によって全ての医師が漢方薬を的確に処方できるようにしたい。 | | 13:00〜17:00
1. サイエンス漢方処方概論(60分+質疑応答) 漢方薬以外の新薬は患者の病態に無関係に“always”薬剤であるが、漢方薬は患者の病態と呼応したときだけ薬剤になるようにみえる。 新薬は基本的にある程度の量のある一種類の化合物が主成分であるが、漢方薬は数千から一万以上の多数の化合物の集合体で、量の多い順にプロットすると圧倒的多数は微量なので“a long-tailed drug”という形を取る。 漢方薬の微量の多成分が一斉に体内に入ることにより、熱産生、免疫、微小循環、水分調整などのシステムの変調をもとに戻す応答を引き出す。薬理学では化合物が能動的に何かをしていると説明するが、漢方薬の作用機序では漢方薬を服用することにより患者が自分のシステム異常を自力で正常化すると説明する。 漢方薬の選択は、熱産生系・免疫/抗炎症系・微小循環系・水分調整系の変調を把握するだけで容易にできる。
2. 速効性が期待できる漢方薬(60分+質疑応答) 前半は一服で効く漢方薬:芍薬甘草湯、葛根湯、桂枝加葛根湯、呉茱萸湯、川芎茶調散、茯苓飲合半夏厚朴湯、五苓散 後半は一両日中に効く漢方薬:半夏瀉心湯、麻杏薏甘湯、通導散、柴蘇飲、桂枝人参湯、インフルエンザの漢方治療
3. 多愁訴に対する漢方治療(60分+質疑応答) 前半は主に身体症状を訴える場合:全身に諸種の愁訴、呼吸器系に偏る場合、循環器系の偏る場合、消化器系に偏る場合、泌尿器系に偏る場合 後半は主に精神症状を訴える場合:全般性不安障害、不安発作、不安と抑鬱、抑鬱傾向
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|  | ■講師 | 井齊偉矢 先生 | | (日高徳洲会病院 院長、サイエンス漢方処方研究会 理事長) |
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| | | | 75年 北海道大学医学部卒業。同年北海道大学第一外科に入局し現在同門。医学博士。専門は消化器・一般外科、肝臓移植外科。 88年から3年間、オーストラリア・シドニー大学オーストラリア肝移植ユニットで肝臓移植の臨床および実験に従事。帰国後、独学で漢方治療を本格的に開始。12年にサイエンス漢方処方研究会を設立し、現代医学にのみ立脚した「サイエンス漢方処方」の普及に努めている。 07年より北海道日高郡・医療法人静仁会 静仁会静内病院院長。 18年9月1日病院名を医療法人徳洲会 日高徳洲会病院に変更。
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